仮説の確度を引き上げる!『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』から現役DSが得た学び

コンサル
元教師
元教師

こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!

今回の記事では、問題解決のためのナビゲーションとなる1冊『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』を現役DSが読んで得た学びについて、皆さんにご紹介させていただきたいと思います。

本書は「データ利活用の教科書 データと20年向き合ってきたマクロミルならではの成功法則」の参考文献として載っていた書籍なのですが、データ利活用の教科書に引用されている部分だけでも学びがあったので、原典を当たったらどんなに学びがあるだろうと思い買ったのですが、買って大正解でした。

データ分析などで重要な「初期仮説」などをどのように立てていけばいいのか、そもそも問題解決においてどうして「仮説」が必要なのかなど、データ分析担当者もデータ分析プロジェクトに関わるビジネスオーナーも、データ分析とは言わず何らかのビジネス課題を解決したいビジネスパーソン一般の方にも学びのある1冊かと思います。

ぜひ本記事を読んで、本書の内容についての解像度を上げていただけると幸いです!

本書の概要

本書は、ビジネスの現場における「考える力(問題解決力)」をテーマにした本です。

高松康平『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』(朝日新聞出版/2020) P1

本書はマッキンゼーやリクルートを渡り歩き、現在は株式会社ビジネスブレークスルーの執行役員として問題解決トレーニングプログラム講座責任者や講師をなさっている高松康平さんの書かれた問題解決、特に仮説についてフォーカスされた1冊です。

本書は、例えば上司のAさんから「〇〇店の売上を改善してくれ」のような漠然とした問題を与えられた時に、その問題をどのように切り分け、どのように進めていき、最終的に施策候補を出す段階まで至るのかという全体の「地図」と、そのプロセスを進めるのに必要な思考の「武器」を教えてくれる1冊です。

本書の視点は巷の問題解決本と比較してもかなり解像度高く、かなり実務寄りに書かれており、社会人経験を重ねて意思決定のレイヤーの少し上の方にいらっしゃる方向けの1冊となっています。

これまで多くのビジネス書や研修で提供されていた問題解決力の多くは「若手向け」研修でしたが、いま求められている内容は「ビジネスリーダー向け」なのです。

高松康平『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』(朝日新聞出版/2020) P13

本書の章立ては以下のようになっています。

  • [ステップ1]現状分析/獲得する武器1:こだわりを持って分ける
  • [ステップ2]問題認識/獲得する武器2:イライラ・キラキラを探す
  • [ステップ3]情報収集/獲得する武器3:事業部長の視点
  • [ステップ4]課題抽出/獲得する武器4:多くの情報をまとめる
  • [ステップ5]解決策の方向性/獲得する武器5:戦略の全体像
  • [ステップ6]アイデア創出/獲得する武器6:思いつきのアイデアを進化させる
  • [ステップ7]評価/獲得する武器7:冷静に選ぶ

上記ステップを見ると、本書における問題解決のフローは大きく分けてWHERE, WHY, HOWの3ステップに分かれていることがお分かりいただけるかと思います。

現役DSが本書から得た学び

私が本書から得た学びは以下の3つです

  • 視座を「事業部長の視点」まで上げよう
  • 本質的課題は3Cから見抜く
  • 解決策は横と縦に広げる

順を追って解説していきます。

視座を「事業部長の視点」まで上げよう

あなたはあるタスクが振られた時に、どのような反応をしているでしょうか?

例えば、上司から「明日までにこの資料をまとめておいて」と言われた時に、「はい、分かりました!」と早速のその資料のパワポ作成に取り掛かるでしょうか?

上記のように、ともすると多くの方はタスクが振られた時に、そのタスクを完了させることをゴールとして突き進むかもしれません。

ですが、上記のような「タスクを振られたので、そのままタスクを消化する」ような仕事の仕方は書籍「コンサルが『最初の3年間』で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦」ではタスクバカと称されてしまっています。

振られたタスクを頑張って消化することの何がいけないのでしょうか?

それは、「そもそもそのタスクは何のために行われるべきタスクなのか」を理解するところから始めていないため、タスクを消化したとしても上司から「思っていたのと違う」と突っぱねられてしまうから可能性があるからに他ならないのです。

上記のように、与えられたタスクに対して、その目的などの上流に遡ることを「論点思考」といいます。

そして、別の言葉で言い表すと、タスクに対して「このタスクは何のためにあるのか?」を考えることは、タスクを振られた作業者の視点から、タスクを振った上司の視点に視座を上げることを意味します。

本書では、問題解決のための本質的な課題を探る際には「事業部長の視点」が欠かせないと書かれています。

これは一平社員の視点と比較するとレイヤーが数個上の視点になります。

事業部長は日々社員が取り組んでいるタスクレベルよりも広い視点で、外部環境というマクロな視点から会計数値などのミクロな視点まで入れた高い視座でビジネスについて考えています。

事業部長の視点

事業部長の視点に立って現在のプロジェクトを俯瞰することによって、一平社員の限定的な視点にフォーカスしすぎず、多くのことを考慮した上で仮説を立てることができるようになるのです。

本質的課題は3Cから見抜く

本書においては仮説構築の序盤から紋切り型にフレームワークを使うことは推奨していませんが、事業部長の視点で問題を俯瞰し、さまざまな視点からデータを集めた上での課題の抽出の段階においてはフレームワークを活用して課題を抽出する方法を例として挙げています。

この段階でフレームワークを使う理由は、本質的課題を抽出するにあたって、フレームワークのさまざまな切り口から問題を見ることによって、その背後に潜む本質的課題を抽出しやすくすることにあります。

例えば、さまざまなデータからファストフード店の売り上げに関する分析について、「ファストフード店を利用する顧客の年齢層が低下したため、顧客一人当たりの単価が減少した」という問題が特定できたとします。

そのような問題に対して、どこに本質的な課題があるのかを探る際に、フレームワークによる切り口を固定しないままでは

  • 「インフレによって外食産業は底冷えしていることが課題だ」
  • 「いや、実質賃金が上昇していないことによる子どものお小遣いの減少が、ファストフード店での顧客単価減退に繋がっているんだろう」
  • 「いやいや、顧客の食の趣向の多様化によって、さまざまな外食に顧客が散らばってしまっていることが課題だ」

と、それぞれのアイデアが思いつきのままに発されてしまい、最終的に何が本質的課題であるかを整理する際に、「すべての観点を考慮できたのか?」ということを確認できなくなってしまいます。

そのような際に例えば、3C

  • 市場・顧客(Customer)
  • 競合(Competitor)
  • 自社(Company)

の切り口に分けて考えることによって

市場・顧客実質賃金の減少によって、外食産業に充てることができる家計の可処分所得が減少しているため、20代以上は家庭内で食事を済ませる機会が増加している
競合こども向け商品付きセットなどを提供することでファミリー層の取り込みを行っている
自社材料費から逆算すると商品価格を上げざるを得なくなり、ファストフード店との比較ではなくファミリーレストランと比較される価格帯になってしまっている

などのように、それぞれの切り口を網羅した形で課題特定のための現状を書き連ねることができます。

そして、網羅された課題の中から、真に問題に貢献してしまっている本質的な課題を特定すればいいのです。

なお、今回の例では3Cを上げましたが、問題を見るための切り口として適切であれば3Cである必要はありません。

例えば、本書の「スーツ店」の例では問題が「予約件数は増えたが、購入率が下がった」点であると特定できた際の切り口としては「予約→接客→採寸・納品→アフターフォロー」という顧客が店と接点を持ってから、商品提供後までの流れという切り口で課題を抽出しています。

解決策は横と縦に広げる

本質的な課題を特定した後の工程としては、その本質的な課題に対する解決策を練る番になります。

具体的な解決策を練る前の方向性として「戦略論から考える」というのがありますが、詳細は本書に譲ることにし、「戦略論から導き出された方向性が決まっている」という前提のもと、施策レベルのアイデアを考えていきます。

その時の大枠のポイントとしては「思いつきのアイデアを進化させる」というのが本書においては掲げられており、詳細なポイントとしては以下の3つに分解することができます。

  • 直感で多くのアイデアを出してみる
  • 直感で出したアイデアをロジカルに拡げてみる
  • 面白い人になりきってみる

本記事では上記3つのポイントのうち、私が特に学びがあると感じたポイント2「直感で出したアイデアをロジカルに拡げてみる」について紹介いたします。

直感で出したアイデアをロジカルに拡げてみる

例えば、ファストフード店において、問題点が「ファストフード店を利用する顧客の年齢層が低下したため、顧客一人当たりの単価が減少した」ことに対する本質的な課題が「実質賃金の低下に伴う家計の圧迫に加えて、感染症による健康需要の高まりのため、栄養バランスを気にする家庭ほど家での食事の機会が増えた」ことであるとしましょう。

そして、直感的なアイデアとして「ヘルシーメニューの開発」というなんとも思いつきのようなアイデアが上がってきたとしましょう。

このアイデアを「ロジカルに拡げる」ためには以下の3つの質問を投げかけます。

  • 「つまり、どういうことか?」(抽象化)
  • 「具体的には?」(具体化)
  • 「他にはないか?」(水平思考)

具体的に見ていきましょう。

「つまり、どういうことか?」(抽象化)

「ヘルシーメニューの開発」について、「つまり、どういうことか?」という施策の抽象化を促すような質問を投げかけてみます。

すると、「メニューの方向性の再考」というアイデアの方向性が出てきます。

思いつきで出てくるアイデアというのは非常に具体的なことが多く、それ以外の施策を考えるにあたっては扱いづらいため、1段階抽象化することによって、具体化することによって他の施策のアイデアを出したり、水平方向に展開することによって他の抽象的なアイデアの方向性を考えやすくする効果があります。

なお、「メニューの方向性の再考」に対してもう一度「つまり、どういうことか?」という質問を投げかけると、「顧客が外食産業に求めるニーズの変化への対応」というさらに抽象化されたアイデアの方向性が浮き彫りになります。

「具体的には?」(具体化)

先ほどの抽象化によって出てきた「メニューの方向性の再考」に対して、今度は抽象化とは逆の「具体的には?」という具体化を迫るような質問をかけてみましょう。

すると、「低コストだが満足感のあるメニューの開発」という「家計の圧迫」に対する別のアイデアを出すことができました。

このようにして、具体 to 具体では限定的な施策しか得られないため、一度抽象化を挟むことによって別切り口から具体的な施策について考えることができるようになります。

「他にはないか?」(水平思考)

ここまでの段階ではまだメニュー再考に関する施策しか考えられていません。

ここで、先ほど抽象化を2段階行ったことを利用して、さらにアイデアを拡げていきます。

そのためには、「他にはないか?」と発想を拡げるような質問を行います。

「顧客の外食産業に求めるニーズの変化への対応」として「メニュー再考」という施策の方向性が出ていますが、それ以外に施策の方向性はないかを考えていきます。

例えば、「家庭への食事の提供」などの施策の方向性が考えられ、そこからさらに具体化を行っていくと、「スーパー向け商品開発」や「パーティ用デリバリーの強化」など、平時の家庭に入り込むための施策やパーティという特殊な状況の消費にフォーカスした施策など、さらに新しいアイデアを展開することができます。

このようにして、最初は思いつきであった「ヘルシーメニューの開発」というなんでもないアイデアからロジックを使うことによって4つのアイデアへと展開することができました。

まとめ

今回の記事では、問題解決のためのナビゲーションとなる1冊『筋の良い仮説を生む問題解決の「地図」と「武器」』を現役DSが読んで得た学びについて3つほど簡単に紹介させていただきました。

何もないところから問題を整理し、データを分析し、課題を特定し、施策を立てていくことはこの本を読む前の私にとっては非常に難しいことのように感じられていましたが、本書を読んでロジカルに仮説を導く方法や施策を考える方法があることを知れたのはとてもありがたかったです。

本記事を読んで少しでも本書について興味の出た方は、ぜひ本書を手に取っていただけると幸いです!

コメント

タイトルとURLをコピーしました