こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!
本記事では、世界を牽引するテック企業・アマゾンの人事戦略に迫る書籍『amazonのすごい人事戦略』から得た学びを厳選して3つお届けいたします!
本書はアマゾンの重視しているOLRというリーダーシップ理論や、他とは一線を画す人材採用選考など、急成長を遂げたアマゾンの背後にある「人」に対する考え方について迫ることができる書籍になっています。
組織の立ち上げフェーズにある方や自社の人材採用プロセスにしっくりきていない方におすすめです!
本書の概要
アマゾンがここまで巨大企業になり、現在も伸び続けているのは、いっぷう変わった人事制度のおかげです。
日本企業の常識からすると非常識とも思えるほど、独特の仕組みですが、じつによく考え抜かれて見事に機能しています。本書は、その人事制度の仕組みができあがっていくのを、アマゾンの内部で体験した人間の視点から解き明かしたものです。
佐藤将之『amazonのすごい人事戦略』(2022/東洋経済) P2
本書はアマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして参画し、オペレーション部門のディレクターを務めた著者が、アマゾンの人事戦略について、「どういった意図でそのような人事戦略になっているのか」を解説した、アマゾンの人事戦略解剖本になっています。
本書の章立ては以下のとおりです。
- Chapter1 アマゾンの人事は何がすごいのか?
- Chapter2 アマゾンのすべての基盤「OLP」
- Chapter3 アマゾンの人事がより理解できる5つのキーワード
- Chapter4 アマゾンの採用
- Chapter5 アマゾンの育成
- Chapter6 アマゾンの目標設定&評価
- Chapter7 アマゾンのリーダー研修
本書から得た学び
本書から得た学びは以下の3つです
- 採用における「この人は我が社を押し上げてくれるのか?」という厳しい視点
- 採用面接における深掘りは再現性のチェック
- 部下の段階に応じた育成理論 — SL理論
順を追って解説していきます。
採用における「この人は我が社を押し上げてくれるのか?」という厳しい視点
Amazonの採用試験における2次面接には、複数の面接官が候補者と1対1で面接を行います。
複数の面接官対1候補者という構図にしないのは、それぞれの面接官が周囲の面接官の意見に流されることなく、独立に判断するためです。
また、Amazonが重要視しているOLP(Our Leadership Principles)というリーダーシップ理論について、各面接官で分担して全てのOLPの項目を網羅できるように質問をしていきます。
そして、最終的にはそれぞれの面接官が、調査したOLPに関する候補者の回答と、その候補者を採用すべきか・すべきでないかについてそれぞれの面接官が投票をし、最終的な候補者の採用可否を決定します。
Amazonの2次面接において、最も特徴的なのがバーレイザーというロールの存在です。
バーレイザー(Bar Raiser)とは、「バーを上げる人」という意味のロールで、バーレイザーがNOと言った候補者は他の人たちが採用を推奨していても絶対に採用しないという特殊な権限を持ったロールの人です。
なお、このバーレイザーはAmazonの中でも特に優秀な人しかなることができない名誉職であり、かつ社内で十分なトレーニングを受ける必要があります。
では、なぜこのような役割を持った人が採用の場面において必要になるのでしょうか?
それは、人手不足の状況では、候補者が所属予定の上司(=面接官)は人欲しさにバー(=合格水準)を下げてしまうことがあるからです。
そのため、Amazonにとっての最低限の基準を満たしているか、もっと言えばカルチャーマッチしていて、Amazonを押し上げてくれるような人材であるかどうかをバーレイザーはチェックしているのです。
企業の価値観にマッチしていない人が組織に入ってきてしまうと、周囲に悪影響を及ぼし、徐々に企業を侵食していきます。
そういった意味でも、バーレイザーという最終防衛ラインを設けているのは、優秀な人から優れたサービスが生まれると考えているAmazonの人事戦略として理にかなっていると感じました。
採用面接における深掘りは再現性のチェック
皆さんも採用面接の際に、よくある質問からどんどんと深掘りして質問されたことがあるのではないでしょうか?
そして、皆さんが面接官なら、どのような話を深掘りするでしょうか?
業務に関連する話?
自身が興味のある分野の話?
候補者が多くを語ることができ、候補者の人となりが分かる話?
本書によると、Amazonの採用面接で受講者の回答内容を深掘りする理由は、「再現性の裏付けを取る」こととされています。
たとえば、候補者が「私はこの会社で100億売り上げました」と面接で堂々と語ってきたとします。
その話を聞いて、「おお、それだけのインパクトを生み出すことができる人材は是非とも我が社に!」と即採用を決定すべきでしょうか?
そうはしないのが、Amazonの採用面接です。
なぜなら、その「100億の売り上げ」が候補者自身が主体的に生み出した成果かどうかがわからないからです。
Amazonでは、候補者の話の裏づけを得るために、STARを充足できるように質問をします。
- Situation (どんな状況であったか)
- Task(どんな責務を負ったか)
- Action(どんな行動を取ったか)
- Result(どのような結果を導くことができたか)
STARに基づいて候補者の話を掘っていけば、候補者が主体的に成果を生み出したのであれば、各質問に対して的確な回答が得られるはずですし、候補者が「棚ぼた的に」成果を得たのであれば、上記の質問の回答に窮するはずです。
面接官はただ相手の話を聞くための人ではなく、カルチャーマッチや候補者の話の信憑性、候補者が入社したとして候補者が話している内容と同じだけの価値を入社してからも発揮できるかどうかを確認するために面接をしているのです。
この「面接の目的」については、自身が面接官を務める際には忘れないように心に留めておこうと思います。
部下の段階に応じた育成理論 — SL理論
Amazonの重視しているリーダーシップ理論(OLP)の1つに「Hire and Develop the Best」(ベストな人材を確保し育てる)という項目があります。
先ほどまでは「Hire(採用)」面についての学びを共有してきましたが、最後に「Develop(育成)」面に関する学びを共有いたします。
ところで、皆さんは上司にどのようにマネジメントされるのが仕事しやすいでしょうか。
「これとこれをいついつまでにやりなさい」という細かな細かなマイクロマネジメントでしょうか。
「この論点をクリアできるようにタスクを切って仕事を進めてね」という大まかな形で仕事を投げられるマネジメント方法でしょうか。
皆さんの思うところとしては、「状況によるな」「人によるな」かもしれません。
入社して間もない段階で「自分で考えてみな」は何をしていいか分からず涙目になってしまいます。
ある程度仕事の仕方は分かっているにも関わらず、「これはこうやってね」と事細かに指示されると、思春期の高校生よろしく「今やろうと思ってたところ!勝手にやらせてよ!」と鬱憤がたまるかもしれません。
では、上司としてはどのようなマネジメント方法を取るべきなのでしょうか。
その時に出てくるのが「SL理論(Situational Leadership)」、読んで字の如く「ケースバイケースマネジメント手法」です。
SL理論では、以下の2軸で上司の取るべきリーダーシップを決定します。
- 上司からの指示的行動が必要な状況か
- 上司からの支援的行動が必要な状況か
そして、部下は段階を応じて次のように状態R(レディネス=成熟度)が移行していきます。
- R1: 業務プロセスを把握できているわけではないため、具体的な指示が欲しい状況
- R2: 業務プロセスが把握できてきたため、指示は受けつつも、自分なりの工夫をするようになり、同時に支援が必要な状況
- R3: ある程度自立的に行動できるようになってきたが、支援は必要な状況
- R4: 十分に自立的に仕事を遂行できる状況であり、指示も支援もほとんど不要の状況
そして、上記の部下の状況に合わせて、上司側も以下のようにリーダーシップの状況S(Situation)を変える必要があります。
- S1: 教示的リーダーシップ = 具体的に指示し、細かく監督する
- S2: 説得的リーダーシップ = 考えを示し、疑問に答える
- S3: 参加的リーダーシップ = 部下が自分で決定できるように仕向ける
- S4: 委任的リーダーシップ = 権限を委ねる
現代においては「このマネジメントが正解!」のような銀の弾丸は存在しないため、状況に応じてマネジメント手法を切り替える柔軟性がマネージャーに求められています。
まとめ
本記事では、世界を牽引するテック企業・アマゾンの人事戦略に迫る書籍『amazonのすごい人事戦略』から得た学びを厳選して3つご紹介いたしました!
Amazonのようなビックテック企業は、当然ながら、優秀な人なくしては現在の成長はありません。
だからこそ、本書からは「いかに優秀な人材を見つけ、育てるか」という視点から多くのことを吸収することができます。
一方で、本記事にはOLPのことはほとんど書いていませんが、アマゾンの成長はOLPのような採用、育成、評価に通底する重要な価値観があってこそとも捉えることができます。
アマゾンの成長の一因について詳しく知りたい方はぜひ本書を手に取ってみてください。
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