次に来るAIエージェントについて、どれだけ知ってる?書籍『その仕事、AIエージェントがやっておきました。 ――ChatGPTの次に来る自律型AI革命』から得た学び

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元教師
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こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!

今回の記事では、生成AIがビジネスのさまざまな場面に活用されつつある現代において、次にくると言われているAIエージェントについて簡単に解説した書籍『その仕事、AIエージェントがやっておきました。 ――ChatGPTの次に来る自律型AI革命』から得た学び3選と実際にAIエージェントサービスに触ってみた感想についてご紹介しています!

生成AIがAPIで利用できたり、RAGがライブラリで簡単に実装できるようになるつつある現代においては、AIエージェントが次の大きなAIの波としてきてもおかしくはありません。

「まずは簡単にAIエージェントについて知っておきたい」というAI初学者の方におすすめの書籍です!

本書の概要

本書では、これから市場に大きな影響を与える可能性のあるAIエージェントについて、その仕組みや具体的な活用例を、ビジネスパーソンの方が分かりやすいように紹介しています。

西見公宏『その仕事、AIエージェントがやっておきました』(技術評論社/2023)P6

本書は、AIエージェントについて、その構成要素、通常のチャット形式の生成AIサービスとの相違点や実存するAIエージェント事例を紹介してくれている、AIエージェントをまずは知りたいという方におすすめの1冊です。

本書の章立ては以下のようになっています。

  • 第1章: あなたの仕事がAIエージェントで変わる
  • 第2章: AIエージェントとは何か
  • 第3章: AIエージェントの仕組み
  • 第4章: AIエージェントを体験する

本書から得た学び

本書から得た学びは以下の3つです

  • AIエージェントが経営する会社
  • AIエージェントの構成要素「個性」「記憶」「計画」「行動」
  • AIエージェントから学ぶヒトの働き方

順を追って解説していきます。

AIエージェントが経営する会社

本書においては、AIエージェント同士の協働によってソフトウェアの開発が行われる企業「ChatDev」が紹介されています。

この企業においては、CEOやCPO、デザイナー、エンジニア、テスターなどのそれぞれ異なる役割を持ったAIエンジニアが在籍しています。

彼らはユーザーからの指示をきっかけとして、CEOから順に要件定義→デザイン→コーディング→テストなどを行っていき、ユーザーの要件に沿ったプロダクトの開発を進めます。

彼らのソフトウェア製造速度は驚異的で、ソフトウェア製造に要した時間は平均約410秒、製造コストは約0.3ドルという数字を叩き出しています。

このように、人間が協働して行っているソフトウェア開発は、協働という仕組みをAIエージェントに転用することによって、いまだかつてない生産性を実現できるのです。

AIエージェントの構成要素「個性」「記憶」「計画」「行動」

AIエージェントが適切に稼働するためには、以下の4つの構成要素が必要になります。

  • 個性(Profile)
  • 記憶(Memory)
  • 計画(Planning)
  • 行動(Action)

順を追って解説していきます。

個性(Profile)

個性は、私たちの年齢・性別・職業など基本的な情報や、性格・社会的立場などの人格やロールに関わる情報を指します。

先ほどの「ChatDev」の例で言えば、「CEO」などの肩書きは個性にあたりますね。

このような個性情報をAIエージェントに与えることによって、目的に向かったタスクを実行するときや他のAIエージェントと協働する際に、個性に基づいた一貫した行動を取ってくれるようになります。

記憶(Memory)

記憶は、AIエージェントの記憶を司る要素であり、「個性」や「計画」、「行動」に影響を及ぼす要素です。

体験した事象からどのようなことを「記憶」したかによって「個性」が再形成されますし、次何をすべきかを「記憶」していることによって、次の「計画」が立てられ、実際に「行動」を起こします。

また、AIエージェントにおいて、「記憶」の実装は工夫のいるものとされています。

例えば、人間はさっき食べた夕飯は覚えているかもしれませんが、1週間前の夕飯はなかなか思い出せないかもしれません。

つまり、人間は記憶を全て平等に覚えているのではなく、ある程度直近の記憶の方がよく覚えているような仕組みになっているのです。

他にも、昨日の夜に行った歯磨きの仕方を忘れることは大人であればあり得ませんが、昨日の夜見た番組の内容は一部忘れてしまっているかもしれません。

つまり、人間は繰り返し実行したり、振り返りをすることによって、一部の記憶に重みがつけられて取り出しやすくなる、ということがあるのです。

今までの話をAIエージェントに置き換えて考えると、「短期記憶」と「長期記憶」の保存の仕方にある程度の工夫が必要ということです。

「短期記憶」に関して言えば、直近1時間の行動については特に重みをつけて保存するようにするとか。

「長期記憶」に関して言えば、AIエージェントが経験する中で得た気づきなどについては、「短期記憶」とは別のストレージに保存するとか。

AIエージェントにおける「記憶」をどのように扱うかは、AIエージェントの性能を決める上で大きな課題となっています。

計画(Planning)

計画は、AIエージェントがタスクを達成するためのステップをどのように計画するのかを決定するための機能であり、私たちが人間が意識的・無意識的に行っている要素です。

例えば、皆さんが「カレーを作ろう!」となった時に、材料もなしにいきなり包丁とお皿を取り出す人はいないと思います。

まずは、以下のようなステップで、なすべき行動を考えるでしょう。

  • カレーにはどのような材料が必要か
  • 家にある材料から、どのような食材を購入する必要があるのか
  • 購入する場所にはどのような手段でいくのがいいか
  • 購入する場所には何を持っていけばいいか
  • どのような順番で料理を進めるべきか

そして、上記のような「計画」をある程度立てた上で「行動」を実行するはずです。

AIエージェントも同様に、ユーザーから投げられた指示に対して、その目的を達成できるように事細かなにタスクを分解して「計画」を立てます。

現在の「ChatGPT o1」などが精度の高い回答ができるのも、この「計画」が優れているからと言えるでしょう。

行動(Action)

行動は、AIエージェントが取ることのできる行動を表す要素です。

「Webで検索をする」「プログラムを書く」「文章を要約する」などが行動にあたります。

前のステップの「計画」は、「そもそもこのAIエージェントはどのような行動が可能なのか」を念頭に置いて作成されます。

上記の4つの要素がどのように規定されているかによって、AIエージェントの振る舞いは大きく変わってきます。

AIエージェントから学ぶヒトの働き方

AIエージェントの持つ4つの要素として「個性」「記憶」「計画」「行動」を紹介してきました。

これら全ての要素は人間が意識的・無意識的に持ち合わせている特性ですが、改めて「計画」の重要性について考えさせられました。

ChatGPT4とChatGPTo1の大きな性能の違いは「思考の鎖(Chain of Thought)」としてタスクを実行する前に一旦思考することによるところが大きく、それはまさしくAIエージェントにおける「計画」のことを指します。

そう考えた時に、「生産性が低い人間」と「生産性が高い人間」も同様と考えられます。

タスクを漫然とこなしているのか、目的から逆算してその目的を達成しうるようなタスクを切ってから行動を起こしているのか。

そのように考えると、自分自身できていないことが多いなと気付かされました。

私自身はタスクを適切な粒度に分解して、工数を見積りながら仕事ができているだろうか。

もしその分解されたタスクが生成AIでもできそうであれば、代替してみるという手はないだろうか。

そのようにして、「ヒトと生成AIの協働の仕方を上手いこと探れるヒトが生産性を爆上げできるんだろうな」と、本書を読みながら思いました。

実際にAIエージェントを触ってみた

本書には、「Aomni」という営業に特化したAIエージェントサービスが紹介されていたので、実際に触ってみました。

このサービスは、自社商品を売り込む時に、自社情報と売り込み先の情報を踏まえて、セールスプランやメールの内容などを考えてくれるAIエージェントサービスのようです。

Screenshot

Aomniにアクセスして、Googleアカウントを利用して登録を進めていくと、まず初めに「あなたのプロダクトは何?」と質問されます。

そのため、プロダクトに関する情報を提供できるWebURLを渡してあげることによって、次に進むことができます。

ちなみに私は自身のブログURLを渡しました。

登録が完了すると、「顧客を登録しましょう」と促されて、サービスを売り込みたい対象企業のURLを入れるように促されます。

顧客企業のURLを入れて、しばらく待つと顧客情報が体系的に整理され、「取引可能性がどれだけあるか」「顧客企業の主力商品・サービスが何であるか」などがまとめて表示されます。

また、投稿時点でベータ版ではありますが、「競合調査」「財務分析」「SWOT分析」など、顧客企業に関する込み入った分析についてもAIエージェントがやってくれます。

実際にAIエージェントに触れてみると、チャット形式の生成AI以上に自律的に調査して、さまざまなことを実現してくれるのがAIエージェントなんだ、とよりイメージが湧きますし、やっていること自体は生成AIを利用したサイトクローリングと情報集約だと思うので、これから先、さまざまな形のAIエージェントサービスが勃興してくるのではと感じることができました。

まとめ

今回の記事では、生成AIがビジネスのさまざまな場面に活用されつつある現代において、次にくると言われているAIエージェントについて簡単に解説した書籍『その仕事、AIエージェントがやっておきました。 ――ChatGPTの次に来る自律型AI革命』から得た学び3選と実際にAIエージェントサービスに触ってみた感想についてご紹介しています!

AIエージェントは思いの外単純な仕組みでできている、かつ、AIエージェントが社会において価値をもたらしつつあることが本記事からも少しご理解いただけたかと思います。

AIエージェントが仕事のあり方を変えてしまうかもしれないという不確実性がある現代の中で、それに関する情報をどれだけ能動的に取りにいけるかが自身の将来を分けるのでは、という強い危機感に襲われる1冊でした。

私も今後AIエージェントの動向を追う、もしくはAIエージェントを作る側に回れるようなムーブをしていこうと思いますので、皆さんも引き続きAIエージェントについてキャッチアップしていただければと思います。

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