こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!
今回の記事では経営に関する名著『ビジョナリー・カンパニー 時代を越える生存の原則』を読んで得た学びを3つに厳選してご紹介したいと思います!
本書は、長く存続する偉大な企業が、いかにして企業として生き延びてきたのか、生き延びれなかった企業と比べてどういった特徴があるのかについてまとめた至極の1冊となっています。
本書を読めば、経営者としてどのような点に注意すべきなのか、はたまたリーダーとしてのどのように組織を運営すべきなのかについて示唆が得られること間違いなしです。
本記事では、ブログ主の主観的に気づきのあった点をまとめていきますので、本書購入の際の参考にしていただけると幸いです。
本書の概要
わたしたちは六年間の調査プロジェクトで、ビジョナリー・カンパニーを選び出し、その軌跡を体系的に調べ、慎重に選び出した比較対象企業と、どう違うのかをくわしく検討し、こうした企業が長年にわたって卓越した地位にある理由を明らかにしようと試みた。
ジム・コリンズ/ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー 時代を越える生存の原則』(日経BPマーケティング/2024) P4
この本は、この調査プロジェクトの結果と、それが持つ実践的な意味をまとめたものである。
本書は長期に渡って優れた業績を維持している企業と、それなりに優れている企業の間にどのような差異があるのかについて、複数の観点から論じられている企業経営の古典とも言える1冊です。
本書の初版は1995年に出版されており、現代の経営の方法論とは異なるのではないかとの見方もできますが、現代との相違点を探しながらも、当時長く存続していた企業にはどのような特徴があり、現代においてもそのような特徴を有している企業はないか、という観点で本書を眺めてみると面白いかもしれません。
本書の章立ては以下のようになっています。
- 最高のなかの最高
- 時を告げるのではなく、時計をつくる
- 利益を超えて
- 基本理念を維持し、進歩を促す
- 社運を賭けた大胆な目標
- カルトのような文化
- 大量のものを試して、うまくいったものを残す
- 生え抜きの経営陣
- 決して満足しない
- はじまりの終わり
本書から得た学び
私が本書から得た学びは以下の3点です。
- 「時を告げること」ではなく「時計をつくること」(=仕組みづくり)
- 進化による進歩をする
- 経営陣は外部から取り入れず、内部から育てる
順を追って解説をします。
「時を告げること」ではなく「時計をつくること」(=仕組みづくり)
すばらしいアイデアを持っていたり、すばらしいビジョンを持ったカリスマ的指導者であるのは、「時を告げること」であり、ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くのは、「時計をつくること」である。
ジム・コリンズ/ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー 時代を越える生存の原則』(日経BPマーケティング/2024) P37
我々の知っている成長中のIT企業などではカリスマ的指導者が多く散見されます。
Appleを建て直したスティーブ・ジョブズ
Teslaを牽引するイーロン・マスク
超巨大企業AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス
そして、そのような企業の成功を考えた時に「あの企業のあのカリスマ創業者がいたから、今のあの企業があるのだ」という風に考える人が多いのではないでしょうか。
確かに、今現在の成功はカリスマ創業者によるところが大きいでしょう。
リスクを厭わない投資判断、優れたプレゼンテーション、不況期のレイオフのような実利的な判断
一方で、ビジョナリー・カンパニーと言えるほどの長期間好業績を残している企業でも同じようにカリスマ的指導者が会社を牽引し続けているのでしょうか。
答えは、NOです。
ビジョナリー・カンパニーの条件として「1950年以前に設立されている」という条件があるため、1人のカリスマ的指導者の力だけではないことが前提となっています。
そのような指導者の交代がある中で、ビジョナリー・カンパニーと呼ばれる企業が競争力を維持し続けることができたのはなぜでしょうか?
答えは、「仕組み化」です。
つまり、当時の指導者は「指導者自身が退いたとしても、自社が優れた会社として維持できるような仕組みづくり」を徹底的に行ったのです。
具体的には、以下のような取り組みをする必要があります
- 会社のビジョンと同じ方向を見ることができる人材を集める
- 適切なインセンティブを設計する
- 将来の成長に必要な領域に投資をする
一方で、本書における比較企業においては、カリスマ的指導者がいるうちには成長を続けるものの、「企業=カリスマ的指導者」のような状況になってしまっていました。
カリスマ的指導者が退任をした途端に、比較企業はそれまでの成長を維持することができないことがしばしば起きていたのです。
進化による進歩をする
ビジョナリ・カンパニーは比較対象企業に比べて、BHAG(社運を賭けた大胆な目標)に続く第二の種類の進歩として、進化による進歩をはるかに積極的に促していたのである。
ジム・コリンズ/ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー 時代を越える生存の原則』(日経BPマーケティング/2024) P244
成長著しい企業を見ると、「あの領域だったら成功するのは当たり前じゃないか」などと思ってしまう人もいるのではないでしょうか。
もう少し身近な例で考えれば、テレビなどで取り上げられる「成功者」を見て、「そりゃあんなスペックを持って生まれたなら成功して当たり前だよ」と恨めしい感想を抱いてしまうのではないでしょう。
もちろん、ラッキーパンチによって上手くいった企業・著名人もいるでしょう。
一方で、今回の「ビジョナリー・カンパニー」は長期的に好業績を維持している必要があるので、1回程度のラッキーパンチでは長期に渡って存続することがありません。
そこで重要になってくるのが、「たくさんチャレンジをし、成果の出たものを残す」というダーウィンの進化論的なビジネスの展開の仕方なのです。
スティーブ・ジョブズも「スティーブ・ジョブズ失敗集」なんてブログ記事が書けるほど、全てのプロダクトがうまいこと売れているわけではないのです。
ジェフ・ベゾスもFire Phoneというスマホを開発して鳴かず飛ばずの大失敗をしているのです。
ここから言えることは、「チャレンジする時には撤退ラインを用意し、深手を追いすぎない失敗を重ねる必要がある」ということです。
チャレンジして深追いしすぎてしまえば、再起不能になってしまうかもしれません。
自社の許容範囲・個人としての許容範囲を考えた上で、その中で挑戦をすれば死ぬことはありません。
また、「ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」に記載がありますが、「自社が世界一になれない部分」に積極的にチャレンジするのもNGです。
例えば、ディズニーが車の開発を始めたとしても、それまでの事業内容との関連性がなさすぎて、とてもではないですが世間から人気が出るような車を世に送り出すことはできないでしょう。
「自社が世界一になれる可能性のある領域で、たくさんのチャレンジを積み重ね、上手くいったものをブラッシュアップしていく」
これがビジョナリー・カンパニー1/2から導かれる結論の1つです。
経営陣は外部から取り入れず、内部から育てる
ビジョナリー・カンパニーと比較対象企業の差をもたらしている最大の要因は、経営者の質ではない。重要なのは、優秀な経営陣の継続性が保たれていること、それによって基本理念が維持されていることなのだ。
ジム・コリンズ/ジェリー・ポラス『ビジョナリー・カンパニー 時代を越える生存の原則』(日経BPマーケティング/2024) P295
いざ会社を建て直そうという場合に、外部から優秀な経営者を雇用したり、局所的にコンサルタントを入れることによって業務改革を推し進めようとする会社は珍しくはありません。
そのような発想の裏には、「すでに他の企業で成功に導いているのだから、弊社においても同じように成功に導いてくれるはずだ」という仮定が隠れています。
ですが、本書ではそのような「外部から引っ張ってきた経営者」によってビジョナリー・カンパニーが維持されることはほとんどないとしています。
「ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」でも同様の指摘がされています。
「外部からきたカリスマ経営者」は企業に文化に合わないような製品・サービス開発に注力したり、それまで企業に貢献してきた人を短期的なコスト削減のために切り捨てたりと、それまでの会社の基本理念をぶち壊すような施策に舵を切ってしまい、結果として会社としての体力がなくなり、買収されてしまう、という事例が「ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」でも多く紹介されています。
では、「外部から引っ張ってきた経営者」がダメなのであれば、企業はどうすべきなのでしょうか。
ビジョナリー・カンパニーのように企業を長期で存続されるためには、「後継者育成」を会社の「時計」としての機能に組み込むことが必要となってくるのです。
そうすることによって、社内から会社をよく理解した後継者が選ばれ、会社の基本理念が適切な形で維持され、会社の強みとされる領域で多くの調整を行い、長期で存続する会社の仕組みづくりを強化する、という好循環のサイクルを実施することができるようになるのです。
まとめ
今回の記事では経営に関する名著『ビジョナリー・カンパニー 時代を越える生存の原則』を読んで得た学びを3つに厳選してご紹介していきました!
本書はビジョナー・カンパニーシリーズの第1弾になりますが、「ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則」と合わせて読むことによって、「どのようにして優れた企業から超優れた企業になるのか」「超優れた企業を維持するためにはどのようなことが必要なのか」という企業としての好ましいライフサイクルについて学ぶことができます。
本記事が本書購入の際のご参考となれば幸いです!
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