こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!
今回の記事では、今やマーケティング業界では一般的となったワードがタイトルとなった書籍『ドリルを売るには穴を売れ』を読んで得た学びを簡単にご紹介させていただきたいと思います!
本書のタイトルは「顧客が何を買っているのか」を考えることについて我々に突きつけてくる、とても示唆に富んだ言葉であると思われます。
また、本書はマーケティングについての分かりやすい解説と「弱小イタリアンレストランを立て直す」という奮闘記のような小説を交互に読みながら、マーケティングという発想を実際のビジネスにおいてどのように適応していくべきなのかを学ぶことができるので、マーケティングというものにこれから挑戦するという方にもおすすめの1冊となっています。
ぜひ本記事を読んで、「マーケティングってそういう側面があるのね」という理解の解像度を上げていただけると幸いです!
本書の概要
この本の位置づけは「入門書」である。営業、販売企画、広告、マーケティングなどにかかわっており、「売ること」に関する体型的な理解をしたい方が、初めて手に取る本として書かれている。
佐藤義典『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社/2018) P1
本書は経営コンサルタントとして活躍されている著者が、マーケティングの基礎について体系的にまとめた1冊であり、理論と小説ベースのシナリオが交互に展開されるので、読み物と非常に読みやすく、なおかつ理論部分の内容が非常に頭に入ってきやすいのが特徴です。
「顧客はなぜその商品/サービスを買うのか」という顧客視点が一貫して記載されており、本書の小説ベースも「顧客理解」に対して重きを置かれているため、マーケティング初学者にとっては必見の本と言えます。
本書の章立ては以下のとおりです。
- マーケティング脳を鍛える
- あなたは何を売っているのか?
- 誰があなたの商品を買ってくれるのか?
- あなたの商品ではなければならない理由をつくる
- どのようにして価値を届けるか?
- 強い戦略は美しい
本書から得た学び
私が本書から得た学びは以下の3つです。
- あなたが「買う」とき、必ず「売る」側が存在する
- 4Pの一貫性の重要性
- 理論と現実の行き来
順を追って解説していきます
あなたが「買う」とき、必ず「売る」側が存在する
あなたが「買う」ときに、その逆には「売る人」がいる。あなたが何かを買うときには、売り手にとってのマーケティングが起きているのだ。
佐藤義典『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社/2018) P13
本書において、上記引用のような「買い手と売り手の対比構造」は度々出現します。
特に、以下の引用部分は非常に示唆に富んでいるものと思われます。
顧客は「ドリル」を買っているわけではなく、「穴を開ける道具」を買っているのであり、あなたはドリルではなく「穴を開ける道具」を売っている。
これは、買い手にとっては当たり前のことだが、ほとんどの人は売り手になった瞬間に忘れてしまう。マーケティングに特殊な理論は存在しない。あなたが買い手であるときにはすべて知っていることであり、その当たり前のことを体系化したのが「マーケティング」なのだ。
佐藤義典『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社/2018) P44
特に、「あなたが買い手であるときにはすべて知っている」というのが痛切であると感じます。
とかく職人気質な方は「製品が良ければ買ってくれる」と考えがちですが、我々は製品の品質という切り口のみで商品を購入しているわけではありません。
見た目、価格、雰囲気、友達のおすすめ、口コミ、手に入りやすさなどの多様な条件が重なって目の前の購入をしているはずなのです。
そして、我々は買い手のときにはそうした購入基準や購入時の判断というものを知っているのに、兎角製品を売る側に回るとその視点を忘れてしまうことがあります。
「売れるためにはとにかく品質向上が大事だ」
「価格を下げれば消費者は必ず買ってくれるはず」
製品を売り出す側に回って、製品の背景やスペックについて知れば知るほど、それらの情報を深くは知らないであろう消費者の視点からかけ離れていってしまいます。
そのため、本書内の小説では「売り手側の視点」から「買い手側の視点」に回るために、
- アンケートを実施し、顧客の声を拾う
- 立て直しを図るイタリアンレストランに張り込み、顧客の会話や雰囲気、時間帯ごとの状況などを観察する
- 主に接客を担当しているスタッフから顧客について話を聞く
などの顧客からの1次情報をとりにいき、そこから「なぜその店に顧客は足を運ぶのか」を分析しています。
4Pの一貫性の重要性
4Pに限らないことだが、マーケティングに重要なのは「一貫性」だ。4Pの間での一貫性、そして4Pと戦略との一貫性だ。吉野家の牛丼という「製品」が良いか悪いかは、それだけでは決められない。あの価格で、駅前で、あのスピードで提供されるからいいのだ。吉野家の牛丼がデパートのレストランで3千円で提供されていたら、あなたは食べるだろうか?
佐藤義典『ドリルを売るには穴を売れ』(青春出版社/2018) P162
4Pとは、
- Product(製品)
- Promotion(広告・販促)
- Place(流通・チャネル)
- Price(価格)
の4つのことを指し、マーケティングの場面で顧客視点を考えるのに欠かすことのできない切り口です。
先ほどの例で考えれば「製品の品質が良ければ…」はProductしか考えていませんし、「価格を下げれば…」はPriceしか考えていないことが4Pに照らし合わせるとお分かりいただけるかと思われます。
そして、「じゃあすべてが顧客に対して評価するために、品質が高くて、バンバン広告をして、バンバン流通させて、価格もとびきり安いのがいいのか」と言われると、そうではありません。
安売りしている高級ブランド品がコンビニに流通していたら、皆さんは「パチモンじゃない?」と疑うのではないでしょうか?
一方で、食事に対する意識として、「胃に入ればなんでも同じ、とにかく早くて安くてそこそこ美味いものを食べたい」という人にとっては吉牛は最良の選択肢ですし、「お金はいくら出してもいいので、食事においては品質を重視したい」という人にとっては吉牛は最悪の選択となるかもしれません。
吉牛が後者の人にとって「最悪」の選択肢になってしまったのは、商品のターゲットと4Pがマッチしていないことが原因に他なりません。
つまりは、製品を売るためには「我々はどのターゲットを狙うのか」を特定した上で、4Pの一貫性を築き、顧客にとっての価値をアピールする必要があるのです。
理論と現実の行き来
本書においては、マーケティングの基礎的な内容を解説するにあたって、「理論的な面を解説するビジネス書部分」と「理論部分をストーリーに落とし込んだ小説部分」とに分けて記載がされていますが、これは我々が現実にマーケティングの考え方を適用するときと同じ、と考えることができるかもしれません。
例えば、マーケターの方はいろいろなマーケティングの理論をインプットして実務に使われているかと思われます。
- ランチェスター戦略
- SEOマーケティング
- SNSマーケティング(UGC)
- マーケティング分析(併売分析やMMM,A/Bテスト)
そして、上記のようなマーケティングの理論は書籍でインプットして、実際の現実問題に調整を行った上で適用してみて、そこでうまくいった/いかなかったというフィードバックが得られて、再度他のPJで適用する、のような試行錯誤的なプロセスを経るものと考えられます。
本書のビジネス書部分と小説部分はそのような現実での適用の過程を再現しているように思えるのです。
そして、本書の小説部分では、「あなたのサービスを買わなければならない理由は何か?」という独自の便益(ベネフィット)について考えるために主人公たちは本場シチリアまで旅をすることを決定しています。
このような内容はビジネス書部分には書かれていませんが、独自の便益を見つけるために小説部分の主人公たちが取った選択であり、現実世界の私たちにおいてもそのような「本には書かれていないが理論から導かれる選択」を取る必要があるものと思われます。
上記のように、「本書で教えた内容を自分なりに解釈して行動してみてね」という示唆が得られる点が、本書がビジネス書と小説部分の両輪で展開していることの良さだと思います。
まとめ
今回の記事では、今やマーケティング業界では一般的となったワードがタイトルとなった書籍『ドリルを売るには穴を売れ』を読んで得た学びを簡単にご紹介させていただきました!
マーケティングに関する本は今までにも読んできたのですが、本書を読むとあらためて「マーケティングというのは考えて、想像して、行動して、データを見て、考えなければならないのだな」と思わされました!
また、本書の著者の別の書籍『図解 実戦マーケティング戦略』もマーケティングを可視化して考えるための本として優れているので、ぜひお手に取ってみてください!
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