こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!
今回の記事では、社会人として言葉を使う人には必見の書籍『大人のための国語ゼミ』を読んで得た学びについてご紹介していきたいと思います!
本書は、伝える能力、質問力、論理力、反論力などの言葉に関する様々な能力を問題を解くことを通じて鍛えることができる、大人の国語の教科書とも言える1冊になっています。
社会人として改めて言葉に関する能力を鍛えたいと思う方は、本記事で本書の概略を掴んでいただけると幸いです!
本書の概要
もう国語から離れてしまった人のために、つまり子どもたちのためではなく大人たちのために、国語の授業をしよう。
といっても、小説の読み方を学ぼうというのではない。
生活や仕事で必要な普段使いの日本語を学ぶ。
だけど、そんなふうに言うと、「じゃあ、いいや」と思う人が出てくるだろう。
いまさら日本語を学ぶ必要なんかないもの。この本の第一の目標は、そんな人たちを振り返らせることにある。
野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』(筑摩書房/2024) P1
適当に相槌を打っている雑談ならよいが、きちんと伝えなくちゃいけない場面で、本当に相手にきちんと伝わっているだろうか。
質問されて、なんだか要領を得ない答え方をしていないだろうか。
議論をしていて、話があちこちに飛んでなかなか議論が進んでいなかったこと、言われたことに納得できないのだければうまく反論できなくてもどかしい思いをしたことは、ないだろうか。
本書は哲学科の教授をしている著者が、大人になってしまった私たちに向けて国語の授業をしてくれるという1冊になっています。
「国語の授業?筆者の気持ちを考えたり、小説の登場人物の気持ちを考えたりするの?」
そう思われた方もいるかもしれませんが、本書における国語の授業は小説読解的な話ではありません。
引用文にあるように、
- いかにして伝えるか
- いかにして答えるか
- いかにして質問するか
- いかにして要約するか
- いかにして議論するか
などの社会人に求められる実践的な「国語力」を鍛えるための授業をしてくれている1冊です。
本書の章立ては以下のようになっています。
- 相手のことを考える
- 事実なのか考えなのか
- 言いたいことを整理する
- きちんとつなげる
- 文章の幹を捉える
- そう主張する根拠は何か
- 的確な質問をする
- 反論する
章立ての逆を考えていただけると、国語力のない社会人像が浮かび上がってくるかと思います。
- 自分の言いたいことを言って終わる人
- 事実なのか考えなのか整理せずに伝えてくる人
- 言いたいことがごちゃごちゃしている人
- 接続詞の使い方がおかしい人
- 話の重要なポイントが分かっていない人
- 主張の根拠が不明瞭な人
- 質問が的外れな人
- 反論の論点がずれている人・反論が反論の体をなしていない人
本書を読むことで、上記のような社会人になっていないかをチェックするとともに矯正することができるようになります。
本書から得た学び
私が本書から得た学びは以下の3点です。
- 接続表現に気を配る
- 隠れた前提を見抜く
- 類比論法で反論する
順を追って解説していきます。
接続表現に気を配る
本書の「きちんとつなげる」の章では、接続詞の意味の復習から始まります。
「それぐらい分かるよ〜、なめんといて〜」
と、思うかもしれません。
ですが、章の途中から以下のような問題を出題されます。
- 次の文章中で不適切な接続表現を一箇所指摘し、適切な言い方に訂正せよ
- 適切な接続表現を補うなどして、問題例文を書き直せ
これが、非常に難しいのです。
普段我々は頭の中で発音をしながら文章を読んでいるかと思いますが、不適切な接続表現が混ざっている文章でも、それなりに読めてしまうのです。
つまり、不適切な接続表現を指摘するためには、文と文の論理的な対応関係をきちんと考えながら読む必要があります。
これが結構難しい。
文と文の一対一の対応関係だけではなく、そこまでの話の流れのような文章全体の流れについても把握をする必要があります。
接続表現を補う場合も同様です。
これらの問題を解いてみると、いかに常日頃流れてくる文章の論理の繋がりについて、意識をせずに読んでいたかが明らかになります。
一方で、自分が日頃文章を書くときにも手癖で不適切な接続表現を使っているかもしれない、と背筋がぞくっとします。
隠れた前提を見抜く
以下の文章を読んでください。
Btタンパク質は昆虫に対しても毒性を持っている。それが人間に対して毒性を持たないという完全な保証はない。賛成派は安全が科学的に立証されたと主張する。だが、完全な立証など不可能である。どれほど綿密なチェックをしようとも、危険性はゼロではない。それゆえ、遺伝子組み換え作物は認めるべきではない。
野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』(筑摩書房/2024) P244
「この主張に反論してください」と言われたら、どうやって反論しますか?
「確かにその主張は正しいかもなぁ」と思われた方もいるかもしれませんし、捉え方によっては「たしかに」と思えるような主張です。
ですが、今回はケーススタディだと思って反論を考えてみてください。
ここで、本書で提供されているヒントをお伝えすると、「隠れている前提がないか」を考えてみると良いと思われます。
主張の論理構造について考えてみると、以下のように整理されます。
根拠:「安全性を完全に立証することは不可能であるから、危険性はゼロではない」
→結論:「遺伝子組み換え作物は認めるべきではない」
では、根拠と結論の間にある「隠れた前提」はなんでしょうか?
正解としては、「危険性がゼロではないものは認めるべきではない」という主張です。
このように、我々が目にする根拠と主張の間には「前提条件」が隠れている場合があります。
適切な反論をするためには、結論を支えている根拠と前提条件をチェックして、そこに誤りがないことを確認することが肝要なのです。
類比論法で反論する
先ほどの主張の隠れた前提「危険性がゼロではないものは認めるべきではない」というのは果たして正しいのでしょうか?
ここで考えるべきは「似たような事例が他にないか」です。
例えば、世の中にある危険なものといえば車や包丁などが挙げられます。
交通事故は毎日必ずどこかで発生していますし、包丁を使った殺傷事件も1年の中で何度か報道される機会はありますよね。
では、車や包丁も危険性がゼロではないので、禁止されるべきものなのでしょうか?
そうではないですよね。
このように、似た事例を使って反証を考えることを類比論法と呼びます。
類比論法 — Aを相手に認めさせるときに、それとよく似たBを持ち出して、まずBについて認めさせる。そしてAもBも同様なのだから、Aも認めるべきだと論じる。
野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』(筑摩書房/2024) P251
なお、類似点にだけ注目すると正しくない主張に対しても納得してしまうことがあるのが類比論法の注意点です。
本書にも記載がありますが、自分が類比論法を使う場合や、相手が類比論法を使ってきた場合は「類比論法で考えられているAとBについて、相違点から反論をすることができないか」をよく検討する必要があります。
まとめ
今回の記事では、社会人として言葉を使う人には必見の書籍『大人のための国語ゼミ』を読んで得た学びについてご紹介していきました!
言葉や話し方、伝え方というのは、相手の考えの浅さ、逆に相手の考えの深さが垣間見えるものです。
社会人としての国語力を今一度鍛え直したい方は、本書をご一読されることをお勧めいたします!
コメント