「自然科学の統計学」第10章演習問題5-ユール過程の解を丁寧に解説してみた

統計基礎
元教師
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こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!

今回の記事では、統計学の青本「自然科学の統計学」の第10章-演習問題5「ユール過程の解」について丁寧に解説していきたいと思います。

今回の問題は高校数学の微分の知識で解くことができる問題なので、大学では数学を学んでいない方もぜひチャレンジしていただければと思います!

問題文

<ユール過程の解>

いま、$p_1(0)=1, p_k(0) = 0~(k \ne 1)$とし、さらに

$$p_k(t) = e^{-\lambda t}(1 – e^{-\lambda t})^{k-1}~~(t>0, k \geqq 1)$$

とする。

この解はユール過程に対する微分方程式を満足することを確かめよ。

ただし、ユール過程においては$\lambda_0 = \mu_0 = 0$となるので、$k \geqq 1$に対する微分方程式を考えれば良い

東京大学教養学部統計学教室『自然科学の統計学』(東京大学出版社/2001) 第10章 P306

フェラー・アレイ過程とは?

世界の人口について考えれば、人が生まれることがあれば、この世を去ることもあり、常に増加と減少をしながら人口は推移している。

このように、増加と減少を共に含む減少を表現するマルコフ連鎖のことを一般に出生死滅過程と呼ぶ。

ここで、増加に関するパラメータを$\lambda_k$、減少に関するパラメータを$\mu_k$とするとき、このパラメータが現在の総数$k$に比例するという過程をおいた出生死滅過程のことをフェラー・アレイ過程という。

ここで、人口総数を$L_t$とおいた時に、総数が$k$であるような確率を

$$p_k(t) = P(L_t = k)$$

とおく。

すると、条件付き確率や出生死滅過程の仮定から

$$p’_k(t) = -(\lambda_k + \mu_k)p_k(t) + \lambda_{k-1}p_{k-1}(t) + \mu_{k+1}p_{k+1}(t)$$

であることが導ける。

また、フェラー・アレイ過程は$\lambda_k$と$\mu_k$が総数$k$と比例するので、

$$\lambda_k = k\lambda$$

$$\mu_k = k\mu$$

とおくことができる。

ユール過程とは?

フェラー・アレイ過程において、減少を考えない、つまり

$$\mu_k = 0$$

としたとき、その出生死滅過程のことを純出生過程またはユール過程という。

解説

$\lambda_k = k\lambda$、$\mu_k = 0$とすると、$p’_k(t)$は次のような式になる。

$$p’_k(t) = -\lambda k p_k(t) + \lambda (k-1)p_{k-1}(t) \cdots (*)$$

ここで、$k-1$があることから、$k \ne 1$の場合と$k > 1$の場合を個別に考える.

$k=1$の場合

$k=1$であるような時、$p’_1(t)$は次の式のようになる。

$$p’_1(t) = -\lambda p_1(t) $$

また、問題文の$p_k(t)$の式に$k=1$を代入すると

$$p_1(t) = e^{- \lambda t}$$

よって、$p_1(t)$を微分すると先ほどの$p’_1(t)$と一致することがわかる。

$k > 1$の場合

問題文で与えられた$p_k(t)$を$t$で微分すると

$$p’_k(t) = – \lambda e^{-\lambda t}(1 – e^{- \lambda t})^{k-1} + \lambda (k-1)e^{-\lambda t}\cdot e^{-\lambda t} (1 – e^{-\lambda t})^{k-2}$$

$$= \lambda e^{-\lambda t} ( 1- e^{-\lambda t})^{k-2}\left( – (1 – e^{-\lambda t}) + (k-1)e^{-\lambda t}\right)$$

$$ = \lambda e^{-\lambda t} ( 1- e^{-\lambda t})^{k-2} (k e^{-\lambda t} -1)$$

$$ = \lambda e^{-\lambda t} ( 1- e^{-\lambda t})^{k-2} (k e^{-\lambda t} -k + k -1)$$

$$ = \lambda e^{-\lambda t} ( 1- e^{-\lambda t})^{k-2} \left(-k (1 – e^{-\lambda t}) + (k -1)\right)$$

$$ = – \lambda k e^{-\lambda t} (1 – e^{-\lambda t})^{k-1} + \lambda (k-1)e^{-\lambda t} (1 – e^{-\lambda t})^{k-2}$$

$$ = -\lambda k p_k(t) + \lambda (k-1) p_{k-1}(t)$$

これは$(*)$式と一致する。

まとめ

今回の記事では、統計学の青本「自然科学の統計学」の第10章-演習問題5「ユール過程の解」について丁寧に解説しました!

式変形自体はかなりシンプルなので、高校数学の計算ドリル、さながら4STEPのように解き進めていただくことができたかと思います!

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