なぜいきなり答えを考えてはいけないのか?書籍『伝説の「論理思考」講座』から得た学び!

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こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!

今回の記事では書籍『伝説の「論理思考」講座』から得た学びについて、現役データサイエンティストが分かりやすく解説していきたいと思います!

本書は論理的思考の精度を上げる上で非常に多くの学びを得られる1冊になっているので、「課題に対する自身の取り組み方はこれでいいのだろうか?」という気持ちをお持ちの方はぜひ本書をご一読いただけると幸いです!

本書の概要

(前略)学生や社会人に向けて、論理思考に関する個別指導を続けてもきました。

(中略)本書では、その指導から得た知見、特に「なぜ論理思考でミスするのか」「どうすれば、ミスを自力で回避できるのか」に関するエッセンスを、あますところなく紹介していきます。

白木湊『伝説の「論理思考」講座』(東洋経済/2022)

本書は長年のコンサルタント経験と論理的思考についての指導経験豊富な著者が、論理思考の方法論についてかなり詳細に、より具体的に記述した、まさに論理思考のハウツー本とも言える1冊です。

本書の中にはケーススタディがふんだんに盛り込まれており、本書内で紹介されている論理思考の方法論を自身も考えながら、時に自分の論理思考の穴に気付かされながら、論理思考を磨いていくことのできる至極の1冊になっています。

本書が他の書籍と一線を画す点は、その具体さにあります。

多くの論理的思考力に関する書籍では「このように考えるといい」という大枠のフレームワークを教えてくれるものの、実際の実践について実務において読者が適用することに任されていることが往々にしてあります。

実際に論理的思考を身につけるかどうかは、そのような取り組むべき課題を読者が持っているか、どれだけ書籍で紹介されている論理的思考のフレームワークを咀嚼して適用できるかにかかっています。

一方で本書においては、論理思考の方法をかなり細かく噛み砕いて説明してくれており、また全体のフローについても提供してくれているので、本書を片手に明日から実践できるような明快な内容となっており、実践書として非常に有益な1冊となっています。

本書の章立ては以下のようになっています。

  • 【導入編】
    • なぜ論理思考は難しいのか
    • 論理思考の「前提知識」の確認
  • 【例題編】
    • ありがちなミスを認識する
    • 「見落とし」が発生する5大原因
  • 【本編】
    • 解説へ入る前の準備
    • 現状を把握する①【前提編】
    • 現状を把握する②【基本編】
    • 現状を把握する③【発展編】
    • 課題を特定する
    • 打ち手を考案する
    • 日常から知識を蓄積する
  • 【応用例題編】 
    • 理解度をチェックする

上記の章立てを見ていただいてもわかるように、本編に入るまでの段階で「本書における論理思考とは」という前提や本書における勘所をこれでもかという物量で解説をしてくれており、論理思考というものに初めて触れる方に対しても非常に易しい設計となっています。

本書から得た学び

私が本書から得た学びは以下のとおりです。

  • すぐに問いに答えようとしない
  • 付加的な単語・情報に着目して意味を考える
  • 全体のフローをイメージする

順を追って解説していきます。

すぐに問いに答えようとしない

問いの要求や条件を回答へ反映するためには、問いの内容(問いの各単語)について「意味を考える」検討を実施できている必要があります。

白木湊『伝説の「論理思考」講座』(東洋経済/2022)P47

現状把握は「課題を特定する上で有用」なのですが、一方で「問いに回答する上で、必須には見えにくい」という側面があります。そのため、「問いに答えよう」と意識するほど、ついつい疎かになりやすいのです。

白木湊『伝説の「論理思考」講座』(東洋経済/2022)P77

皆さんは上司から「考えるべき課題」「やるべきタスク」が与えられた時に、まず最初に行うことはなんでしょうか?

課題に対する情報収集?

それともまずはタスクに手をつけてから考えてみる?

それともフレームワークに従ってMECEに切り分けてみる?

本書では、そのような行動は「ありがちな回答」に落ち着いてしまうのでやめましょう、と示唆されています。

例えば、本書で掲載されている事例では

  • 私は、普段、ファストフードのハンバーガーを食べないのですが、食べたくなるように、私を説得してください
  • 日本に存在する、携帯電話・スマートフォンの台数は?

のような問いに答えることが要求されます。

上記のような問いが与えられた時に皆さんはどのように考えるでしょうか?

ちなみに、私はまんまと「ありがちな回答」にハマってしまいました。

例えば、後者のスマートフォンの例。

携帯電話・スマートフォンを利用するケースは

  • 個人利用
  • 法人利用

に限られるので、個人は必ず1台はスマホを持っていると仮定しました。

また、法人については全ての企業において業務用スマホを支給しているわけではないので、法人の5割が業務用スマホを支給しているという仮定をおきました。

上記仮定によって、日本の人口と就労人口が分かれば、携帯電話・スマホの数を概算できるだろうと考えました。

しかし、そのような思考は問いの1つの側面しか見ていないことが本書では指摘されています。

詳しくは追々説明いたしますが、重要なことは「問い」に対して疑問を持つことです。

  • その問いはそもそも何のために存在するのか?
  • その問いの目的は何か?
  • その問いにおいて特殊な点はどこか?(次のセクションで説明します)
  • 自分が考えた答えは本当にその問いの本質的な答えになっているのか?
  • 自分が考えた答えは問いを発した人物にとって意味のある答えになっているのか?

このような「問いに対する問い」を持つことによって、初めて精度の高い回答を考えるスタートラインに立つことができるのです。

付加的な単語・情報に着目して意味を考える

それでは、具体的にどのようにして「問いの内容」について考えていけばいいのでしょうか?

そのための1つの方法が、「付加的な単語・情報に着目して意味を考える」という行為になります。

付加的な単語・情報に着目する手順は大きく分けて3つあります。

  • 問いを因数分解する
  • 単純化した問いを作成する
  • 付加的な単語を置き換えて、類似の問いを作成する
  • 類似の問いと比較し、付加的な情報の意味を理解する

順を追って解説していきます。

問いを因数分解する

問いというのは、いくつかの意味のある部分に分解することができます。

例えば、ハンバーガーの例で言えば

  • 普段
  • ファストフード
  • ハンバーガー
  • 食べない
  • 食べたくなる
  • 説得

のように分解できますし、携帯電話の例で言えば、

  • 日本
  • 存在する
  • 携帯電話・スマホ
  • 台数

なお、私は上記の作業を「単語を抽出する」という言葉で勝手に読んでいます。

単純化した問いを作成する

先ほどのステップで抽出した言葉をより単純化された言葉に置き換えてみましょう。

  • 私は、普段、【外食】を食べないのですが、食べたくなるように、私を説得してください
  • 日本に存在する、】携帯電話・スマートフォンの台数は?

上記のように単純化すると、

  • 「ファストフードのハンバーガー」という単語は【外食】という言葉よりも付加的な意味を持っていたんだな
  • 【日本に存在する】という言葉あるとないとでは推論の規模が変わってしまうから、日本に限定する言葉は付加的な意味があったんだな

と、どの単語が付加的な情報であったのかについて理解を深めることができます。

付加的な単語を置き換えて、類似の問いを作成する

付加的な単語が特定できたら、その単語を類似した言葉に置き換えて、類似の問いを作成してみます。

  • 私は、普段、ファストフードの【ドーナッツ】を食べないのですが、食べたくなるように、私を説得してください
  • 私は、【普段から】ファストフードのハンバーガーを【食べている】のですが、【食べたくなくなるように】私を説得してみてください。
  • 日本に存在する、【パソコン】の台数は?
  • 【アメリカ】に存在する、携帯電話・スマホの台数は?

付加的な単語が複数存在する場合は、それぞれの単語について複数の類似の問いを作成してみましょう。

様々な角度から問いについて考えることによって、より多くの示唆が得られるようになります。

類似の問いと比較し、付加的な情報の意味を理解する

最後に元の問いの文と類似の文を比較しながら、付加的な単語・情報があることによって考慮するべき事項について思いをめぐらせていきます。

例えば、ハンバーガーの例で考えると

  • ドーナッツが食べたくなるためには【おやつ】という、人によっては食事をしていない時間に対してアプローチする必要があるが、ハンバーガーは朝食・昼食・夕食という必ず生活に組み込まれている他の食事の代替となる必要があるので、他の食事と比べた時のメリットを提示する必要がある
  • 普段から外食をしない人の場合は、味などの面だけでなく金銭的な意味合いもあるかもしれないので、その点についても考慮する必要がある
  • 日常的に食べている人間に食べることによる害を説明しても食べることをやめないケースもあるので、食べていない人にメリットだけを伝えても食べたくならないことを考慮に入れる必要がある、そのような場合には「食べ続けると死に至る」のような「食べることの必要性」について訴求する必要がある

と、類似した問いと比較を行うことによって、様々な示唆を得ることができます。

上記のように、付加的な単語・情報について比較をしながら考えていくことによって、最初に問いを受け取った時には考えもしなかったような視点を持って、問いを再度見つめ直すことができ、問いに対する解像度を上げることができます。

全体のフローをイメージする

先ほどは付加的な単語・情報について詳細に見ていくことによって問いに対する解像度を上げましたが、今度は全体のフローをイメージすることによって問いに対する解像度を上げていきましょう。

例えば、携帯電話・スマホの例で考えると、少し特殊ですが「スマホが生まれてから死ぬまで」にフローについて考えてみましょう。

  1. スマホ工場で製造される
  2. 出荷されて店頭に並ぶ or 倉庫に在庫として保管される
  3. 利用者の手元に届いて利用される
  4. 利用者が利用しなくなったら家の収納などにしまわれる
  5. 最終的には廃棄される or リサイクルショップに売りに出される

上記のように考えると、私が考えていたような「個人利用 or 法人利用」のような話は上記フローにおける3の時点での話でしかなく、

  • 工場や倉庫で出荷予定のスマホ
  • 店頭に並んでいるスマホ
  • 家に眠っているスマホ
  • リサイクルショップに並んでいるスマホ

などについては全く考慮されていなかったことが分かります。

私が「利用中のスマホ」についてのみ考えてしまったのも、人間は身近に想像できることから思考を広げていく、という習性によるものであることが分かります。

つまり、全体のフローを想像することによって、人間の習性としての思考(俗にいう「早い思考」)にとどまることなく、全体を俯瞰した思考(俗にいう「遅い思考」)で考えることができるようになるのです。

まとめ

今回の記事では書籍『伝説の「論理思考」講座』から得た学びについて、現役データサイエンティストが分かりやすく解説していきました!

本記事では本書のエッセンスの一部を紹介いたしましたが、紹介した以外にも

  • 複数の切り口を結びつける
  • 施策を「類似の施策」から逆算する
  • 主体からフローを考え、フローから主体を引き出す

などの非常に具体的で有用な「論理思考」の方法が掲載されているので、気になった方はぜひ手に取ってみてください!

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