データ可視化の教科書「Google流資料作成術」を読んで得た学び・これから実践したいこと

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元教師
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こんにちは!データサイエンティストの青木和也(https://twitter.com/kaizen_oni)です!

今回の記事では、データ可視化をする人のための教科書的存在「Google流資料作成術」から私が得た学びとデータアナリストとしてこれから実践していきたいことを共有していきたいと思います!

本書はデータを使って報告書を作成する方、意思決定を行うためにデータを可視化する方など、データを可視化する必要がある様々な方にとって有用な書籍になります!

データの可視化は目的ではなく手段であるため、データを可視化することによって行動を変容したら何らかの気づきを得られなければ意味がありません。

ぜひ本記事で、本書から得られる学びは何なのか、本書をどのように可視化に役立てていけばいいのかの外観を掴んでいただけると幸いです!

時間がない方のための3行要約
  • 相手に認知的負荷をかけないようにしよう
  • 相手に見てほしいところが一瞬で掴めるように強調しよう
  • 情報ゼロからスタートして少しずつ情報を付け足していこう

本書の概要

本書はGoogleのデータビジュアライゼーション研修の開発担当者として、データビジュアライゼーションの原理を研究し、Google社内外の多くの方にデータを効果的に伝える方法について世に広めていた著者が、すべてのデータビジュアライゼーションの必要のある人に向けて書いたデータ可視化に関する書籍です。

本書はデータビジュアライゼーションに関する本であることもあって、デザインや伝え方の観点で非常に読みやすく、かつ「データを通して伝える」ことに関するトピックがこれでもかと詰め込まれた「データ可視化に関する大家」とも言える1冊になっています。

本書の章立ては以下のとおりです。

  1. コンテキストを理解する
  2. 相手に伝わりやすい表現を選ぶ
  3. 不必要な要素を取りのぞく
  4. 相手の注意をひきつける
  5. デザイナーのように考える
  6. モデルケースを分解する
  7. ストーリーを伝える
  8. さあ、全体をまとめよう
  9. ケーススタディ
  10. 最後に

本書は章立てを見ていただいてもお分かりいただけるように、「どう可視化するか」だけでなく「何を可視化しないか」「どのような文脈の中で可視化するか」といった、「データの見せ方」だけでない広範なデータ可視化に関する知見をケーススタディと一緒に身につけることができます。

本書を通して私が学んだこと

データアナリストとして私が本書から得た学びは非常に多いのですが、その中でも厳選するとしたら、以下の3つになります。

  1. 相手の「認知的負荷」を最小限にする
  2. 「無意識的視覚情報」で相手の注意を見てほしい箇所に引きつける
  3. データを可視化する時はまずはすべての情報を落としてみる

順番に解説していきましょう。

相手の「認知的負荷」を最小限にする

資料を作成するときに、要素を1つ加えるごとに、相手に理解するための負荷(認知的負荷、Cognitive Burden)をかけることになります。要素を加えた分、受け手に頭を使わせることになるのです。

コール・ヌッスバウマー・ナフリック『Google流資料作成術』(日本実業/2022) 第3章 不必要な要素を取りのぞく P 71

この発想は私にとっても目から鱗でした。

今までの私は「相手により多くのことを受け取ってもらえるように」1枚のスライドに多くの補足的情報を埋め込んでいました。

それは常に相手のことを思っての行動でした。

一方でそれは相手にとってはありがた迷惑な行動であった可能性があるのです。

多くの情報があれば人は多くのことを読み取ってもらえると考えますが、それは読み取る相手があなたと同じ前提知識を共有している場合に限ります。

しかし、そのスライドを作ったあなた以上にそのスライドについて詳しい人間はいないのです。

そこで本書では、資料を見る側の「認知的負荷」を下げる方策として、「視覚認知のゲシュタルトの法則」という法則を紹介しています。

この方法を使えば、視覚的情報をある程度削っても、こちらの伝えたい意図を相手にしっかりと伝えることができるようになります。

視覚認知のゲシュタルトの法則」として本書で紹介されているのは以下の6つの法則です。

  • 近接
  • 類似
  • 囲み
  • 閉合
  • 連続性
  • 接続

順番に紹介していきましょう。

近接

第1の法則「近接」は、物理的に近いものを同一グループとみなす傾向を利用した可視化です。

類似

第2の法則「類似」は同じような特徴を持つものを同一のグループとして見る傾向を利用した可視化です。

囲み

物理的に囲まれているものを同じグループとみなすことを利用した可視化です。

閉合

全体の一部が欠けていたとしても、目が勝手にその差を埋めようとしてくれる働きを利用した可視化です。

連続性

あるものを見たときに、最も自然な形を追求し、それが明らかに存在しない場合でも勝手に連続性を作り出す性質を利用した可視化です。

接続

線などで物理的につなげられているものを同一のグループとみなす性質を利用した可視化です。

これらの法則を用いることによって、多少情報量を減らしたとしても、「何がセットになっているのか」を効果的に伝えることが可能になります。

「無意識的視覚情報」で相手の注意を見てほしい箇所に引きつける

以下の文章を読んで、この文章が何の小説の抜粋かを答えてください。

多くの人は、この小説が中島敦の「山月記」という小説の一部分であることが瞬間的にわかったはずです。

それはなぜか?

それは、山月記の特徴的なフレーズだけが青字で書かれており、その他の文章は目立たないように灰色で書かれているからです。

このように、人は無意識のうちに灰色時の中の青字の部分を真っ先に認識してしまうのです。

これが無意識的視覚情報です。

このように特に伝えたいメッセージやグラフの特定の部分を周囲の情報とコントラストをつけることはこちらの伝えたいことを認知的負荷をかけることなく認識してもらうために有効です。

データを可視化する時はまずはすべての情報を落としてみる

これを削除することで何か変わるだろうか、と自問しましょう。何も変わらないようであれば削除しましょう。見た目が良いから、作るために頑張ったから、などの理由で残したくなる誘惑に打ち勝ちましょう。メッセージを補強しない要素は、必要ありません。

コール・ヌッスバウマー・ナフリック『Google流資料作成術』(日本実業/2022) 第5章 デザイナーのように考える P 133

私たちはスライドやグラフにとかく情報を詰め込もうとします。

「すべての商品の時系列的な変化を比べられるように主要4商品の時系列データを1枚のグラフに入れ込もう、もちろんすべてカラーリングつきさ」

そして、それらの情報に対峙した情報の受け取り手は懸命にそれらのグラフから情報を読み取ろうとします。

「全体的な傾向としては上昇傾向にあるから特に問題はないかな」

しかし、データ作成者が伝えたい情報は「主要4商品の中で2位の位置につけていた商品カテゴリが近年低下傾向にある」というメッセージだったとします。

つまり、データ作成者側の伝えたいメッセージがグラフを通じて伝わっていないということです。

そのような時はまず、グラフから一切の情報を落としてみます。

次に、相手に伝えたい主なメッセージが際立つように配色や線の太さを変えるなどの加工をしていきます。

また、スライドのタイトル部分には無機質なグラフタイトルではなく、そのグラフが相手に伝えたい種メッセージをそのまま書き込みました。

このようにして、一度余分な情報をゼロベースに戻してから、相手に伝えたい必要な情報のみを色や大きさ等で強調をすることによって、そのグラフで伝えたいメッセージを的確に相手に伝えられるようになります。

私が今後実践していきたいこと

以上の学んできたことは早速現在のデータアナリストとしての仕事でも活用していきますが、本書には上記に挙げた以外にも多数のデータ可視化に関する有用なTipsがあります。

その中でも私が今後実践していきたいことは以下の3つです。

  • データ可視化の「コンテキストを確認するための質問」をデータ可視化をしたいと言っているユーザーとつぶしていく
  • PowerBIで可視化をする際に、注目している情報以外をグレーにできないか模索する
  • 既存のレポートに対して、情報の引き算をしてユーザーが必要な情報を引き出しやすいように改良する

データ可視化、というととりあえずあるデータをいろんなグラフで可視化してみようとなるのが世の常かと思いますが、そのように漫然と可視化をするのではなく「ユーザーにグラフから読み取ってほしい情報は何か」「ユーザーがどのような情報をキャッチできれば行動を変えることができるのか」等の可視化の目的に立ち返ったレポート設計をしていきたいと考えています。

まとめ

今回の記事では、データ可視化をする人のための教科書的存在「Google流資料作成術」から私が得た学びとデータアナリストとしてこれから実践していきたいことを共有しました!

本書を一読しただけでも多くの気づきがあったのですが、今後はデータ可視化案件に携わるときのバイブルとして手元に置いておき、各章の内容を適宜確認しながら、目的に沿った可視化をしていきたいと思います。

本記事を読んで興味を持っていただけたデータ可視化に関わる方はぜひ本書を手に取ってみることをお勧めいたします!

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